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小児科でよくみられる病気

先天性甲状腺機能低下症
Childhood Illnesses

生まれつき甲状腺のはたらきが弱く甲状腺ホルモンが不足する疾患です。発生頻度は3000~5000人にひとり程度と推定されています。現在日本ではこの疾患について新生児マススクリーニング検査が行われており、症状が明らかになる前に発見されるケースがほとんどですが、新生児マススクリーニング検査で発見できないケースもまれにあります。

甲状腺ホルモンは首の全面にある甲状腺という臓器から分泌され、全身の代謝を活発にする作用があるほかに、小児では体の成長や知的な発達にもとても重要です。甲状腺ホルモンが不足すると、出生後早期には、元気がない・哺乳不良・体重増加がよくない・黄疸の遷延・便秘・手足がつめたい・泣き声がかすれているなどの症状が現れることがあります。長期的には身体の成長や知的な発達が遅れてしまうことが問題となります。

原因は、甲状腺が正常に形成されていないもの(無形性・低形成)、甲状腺が正常の場所に存在しないもの(異所性甲状腺)、甲状腺ホルモンの合成に問題のあるもの、甲状腺に対して指令をだす脳の下垂体や視床下部に障害のあるもの(中枢性)などです。また、母親の甲状腺疾患や抗甲状腺剤の内服や、過剰な海藻類の摂取・過剰なイソジン消毒・胎児造影検査といったヨード過剰が新生児の甲状腺のはたらきに影響をおよぼすこともあります。症状の程度はごく軽症なものから重症なものまであり、また経過も生涯治療を継続する必要のあるものから、甲状腺ホルモンの不足が一時的であると考えられるものまであり、さまざまです。新生児マススクリーニング検査で陽性となり、精密検査で病院を受診されると、診察・血液検査・甲状腺エコー検査・膝(大腿骨遠位端骨核)のX線検査などをおこないます。検査結果を総合的に判断して甲状腺ホルモンの不足がうたがわれるような場合は治療を開始します。

治療は1日1回甲状腺ホルモン薬(レボチロキシンナトリウム)を内服します。定期的に血液検査を確認しながら投与量を調節していく必要がありますが、しっかりと治療を継続していれば甲状腺ホルモン不足による症状は出ず、病気のない人とかわらない生活を送ることができます。

3歳以降の適切な時期に原因に対する検査(病型診断)をおこなうことがあります。また、この時期までの経過等もあわせた評価で休薬可能なケース(一過性甲状腺機能低下症)も存在します。