小児科学講座 代謝班の今川英里特任講師、角皆季樹助教、西田ひかる大学院生、大石公彦講座担当教授の共同研究論文が2025年2月18日付でJournal of Hepatology誌(IF 26.8)に掲載されました。
Title: Developing splice-switching oligonucleotides for urea cycle disorder using an integrated diagnostic andtherapeutic platform
URL: https://doi.org/10.1016/j.jhep.2025.02.007
シトリン欠損症は、日本人に多い先天代謝異常症のひとつで、尿素サイクル異常症に分類されます。その診断にはSLC25A13遺伝子の変異検出が重要です。しかし、従来の遺伝子検査法では見つけることができない深部イントロン変異が多くの患者で存在することが分かっており、確定診断が困難なケースがあることが知られています。
本研究グループは、シトリン欠損症を含む尿素サイクル異常症8疾患に対し、非コード領域を含む全配列を解析する遺伝子パネル“Prune”を開発しました。本パネルの活用により、正確な診断が可能となり、迅速な医療介入の実現が期待されます。
さらに、“Prune”と患者血液のmRNA解析を組み合わせることで、新たな深部イントロン変異c.469-2922G>Tを3名の日本人シトリン欠損症患者から検出しました。この変異がSLC25A13 mRNA内に偽エクソンを挿入するスプライシング異常を引き起こし、シトリン欠損症の発症に関与することを証明しました。
加えて、患者由来iPS細胞から作製した肝細胞およびminigeneベクターを用いた解析を行い、設計したSSO(スプライシング修飾オリゴヌクレオチド)の投与実験を実施しました。その結果、SSO投与によりSLC25A13の正常なmRNAおよびシトリンタンパク質の発現が回復し、シトリン欠損症の病態である尿素合成やアンモニア解毒機能の障害が改善されることを明らかにしました。
本成果は、現在、肝移植のみが根治的治療であるシトリン欠損症に対し、核酸医薬を用いた新たな治療法の可能性を示す重要な前臨床試験データであると考えられます。
慈恵医大小児科は、今後も患者さんに還元できる研究を続けていきます!
代謝班の先生方、おめでとうございます!
